先般の台風6号及び7号や大雨等により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
9月1日は防災の日です。
ここ近年、毎年のように地震や大雨・台風などの自然災害が日本列島で頻発しています。
最近よく耳にするのが線状降水帯などによる集中豪雨の被害が増加しています。
自然災害への備えは万全ですか。
災害により被害を受けた場合には、申告・納税等に係る手続きについて様々な救済措置がありますが、
今回はそれらの中から雑損控除と災害減免法による減免措置についてお話したいと思います。
☆所得税の軽減措置
◆雑損控除
災害もしくは盗難、横領などにより個人が被害を受けた場合に一定の所得控除が受けれます。
対象者
被害を受けた資産の所有者が「納税者」もしくは、「納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額が48万以下の方」。
対象となる資産
住宅や家財を含む生活に通常必要な資産となります。
従って、個人で事業をしている人の事業用固定資産や棚卸資産、ならびに、個人で有する別荘や貴金属、書画、骨董などの一組の価格が30万円超のものなどは対象外になります。
雑損控除の計算
控除額は次の①と②のうち、いずれかの多い方の金額です。
① 損失額※-所得金額×10%
※損失額は資産に生じた損害金額から保険金や損害賠償金などによって補てんされる金額を控除した金額をいいます。
なお、被災に伴い地方公共団体から受け取った義援金は所得税法上、非課税となります。
また、この分配金を受けた義援金は、資産の損害の補てんを目的とするものでないことから、雑損控除における損失額の計算上、その金額を控除する必要はありません。
②損失額のうちの災害関連支出の金額-5万円
「災害関連費支出の金額」とは、災害により滅失した住宅や家財などの取り壊し、除去、原状回復費用など災害に関連して支出したやむを得ない費用をいいます。
手続き
確定申告書に、雑損控除に関する事項を記載するとともに、災害等に関連したやむを得ない支出の金額の領収を証する書類を添付するか、提示をしてください。
なお、損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後(3年間が限度)に繰り越して、各年の所得金額から控除することができます。
(雑損控除は他の所得控除に先だって控除することとなっています。)
損失額を繰り越すには、損失発生以後、連続して確定申告書を提出することが必要となります。
◆災害減免法
災害によって受けた住宅や家財の損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除きます。)がその時価の2分の1以上で、
かつ災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万以下の場合に受けることができます。
災害減免法により軽減または免除される所得税の額の表 | |
所得金額の合計額 | 軽減または免除される所得税の額 |
500万円以下 | 所得税の額の全額 |
500万円を超え750万円以下 | 所得税の額の2分の1 |
750万円を超え1,000万円以下 | 所得税の額の4分の1 |
手続き
災害減免法の適用を受けるためには、確定申告書等に適用を受ける旨、被害の状況および損害金額を記載して、納税地の所轄税務署長に確定申告書を提出することが必要です。
いずれの方法でも、自治体の発行する「り災証明書」を申告書等に添付又は税務署の職員への提示が必要です。
◇ ◇ ◆
☆災害減免法と雑損控除の違い
①控除の仕組み:災害減免法は税額そのものの控除、雑損控除は所得控除となっています。
②損失の原因:災害減免法では風水害や地震などの自然災害が対象ですが、雑損控除では盗難や横領も含まれます。
③所得の制限:災害減免法では所得が1,000万円以下という制限がありますが、雑損控除には所得制限がありません。
④翌年移行への繰り越しの可否:災害減免法では翌年以降の繰り越しはできませんが、雑損控除なら3年間の繰り越しが可能です。
参考に国税庁が公表している令和5年度の比例表を見てみましょう。
家族構成 夫婦、子供2人 (子供は16歳以上、そのうち1人が19~22歳の場合)
所得600万円、所得税及び復興特別所得税の額が25万9,800円
災害関連支出の金額はなく、社会保険料控除68万円、生命保険料控除4万円。
損害額は、住宅や家財の価額の2分の1以上です
損害額 | 所得税法(雑損控除)適用による所得税及び復興特別所得税の額 | 災害減免法適用による所得税及び復興特別所得税の額 |
100万円 | 207,700円 | 129,900円 |
200万円 | 105,600円 | |
300万円 | 51,500円 |
・損害額100万円の場合 雑損控除だと:259万+(100万ー60万)=299万(所得控除)、600万-299万=301万円(課税所得) 税額 207,700円
災害免除法だと、所得が600万円なので 259,800×1/2 税額129,900円
損害額が100万円の場合は災害減免法を適用した方が有利になりますが、200万円、300万円の場合は所得税法の雑損控除を適用した方が有利になります。
災害の場合には、「雑損控除」と「災害減免法」のいずれかが適用できますので、被害の状況や給与などの所得等を総合的に勘案して有利な方を選択してください。
参照:国税庁HP
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1110.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1902.htm
担当 岡田
~税金の相談については、三重県鈴鹿市の税理士法人フラッツ・コンサルティングまで~