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役員の社宅制度の活用と賃貸料相当額

こんにちは、今週担当の山納です。

当事務所の繁忙期にブログ更新をお休みさせていただいておりましたので、実に8か月ぶりのブログです。
早いもので、もう1年の半分が終わってしまいました。
梅雨が明けたら夏本番、今年はエルニーニョ現象により暑い夏になりそうですので、皆様体調管理に努めていただき乗り越えましょう。

役員、会社の社宅に住む

社長様を始めとして、役員の方が自宅を購入するにあたり、会社として何か出来る方法はないかとお考えになる方もいるかと思います。
役員ご自身の名義で、つまり個人で自宅を購入されるケースが多いと思われますが、会社で建てて社宅として住むという方法もあります。
この方法、意外にも税法的に認められている制度であり、節税にも繋がる方法でもあるのです。
今回は、ポイントを絞って役員の社宅についてお話ししていきます。

役員、会社に家を建ててもらう

ちょっと御幣のあるサブタイトルになっちゃいましたが、社宅と言っても主に2パターンありまして、1つは会社が不動産会社等から
借り受けた住宅(借家やマンションなど)、もう1つは会社が家を建てて自社所有する住宅が該当します。
今回は、後者の会社が家を建てて自社所有する住宅で話を進めていきます。

会社は社宅として住宅を建てることで、多くの節税効果が得られます。
建物取得時の登記費用や不動産取得税、毎年の減価償却費、固定資産税、火災保険、修繕費などが該当します。
これらが会社の経費として認められるわけですから、黒字決算の会社であれば法人税等の減少に繋がるでしょう。
役員目線で言えば、減価償却費以外は個人で建てた場合、自分自身で支払わなければいけない経費となり、それを払わなくても
いいわけですからウハウハです。
会社、役員双方にとってメリットがあるわけですから、会社に家(社宅)を建ててもらうことを考慮する価値は十分にあると思います。

役員、会社に家賃を支払う

会社が社宅を建ててくれて、そこに住むに当たり家賃が発生しますが、さすがにタダでというわけにはいきません。
タダでもいいんですけども、役員は無償で社宅を利用することになり、その場合は家賃代分を給与として受け取ったとみなされてしまいます。
つまり、役員報酬と同様、無償の家賃分(現物支給)にも所得税がかかり、役員個人の所得税額が増えてしまうのです。
ケースバイケースですが、基本的にはタダはやめた方がいいかと思います。

社宅の家賃はどのように決めたらいいのか?
ここ、非常に気になるところですよね。
ちなみに、社宅家賃ですが、国税庁の関連ページには「賃貸料相当額」という表現が使われています。
以降、あえてこの「賃貸料相当額」という言葉を使っていきますのでご了承ください。

賃貸料相当額の決め方には計算式がありまして、社宅の規模によって与えられた式を使い算出していきます。
国税庁としては、この計算式に基づいて算出された1か月当たりの賃貸料相当額を、役員から受け取っていれば給与として課税しないとしています。
では、どのように賃貸料相当額が決められていくのでしょうか。

役員、会社に家賃を決めてもらう

賃貸料相当額を決めるにあたって、まずは社宅の規模を判定します。
社宅の規模は、①小規模な住宅、②小規模でない住宅、に分けられます。
要は、小規模な住宅か否かの2択ですね。
①小規模な住宅というのは、A法定耐用年数が30年以下の建物の場合、床面積が132㎡以下である住宅のこと、B法定耐用年数が30年を超える建物
の場合、床面積が99㎡以下である住宅のこと、をいいます。
②小規模でない住宅は、上記AとBの床面積を超える住宅が該当します。

では、それぞれの規模の賃貸料相当額算出の計算式を見ていきましょう。
その前に、これからご紹介する計算式を使って、実際に賃貸料相当額を計算してみようと思いますので、
必要な設例の数字をご案内しておきます。
・建物の固定資産税の課税標準額 20,000,000円
・敷地の固定資産税の課税標準額  8,500,000円
・住宅は木造で、耐用年数を22年とします
 ※建物や敷地の固定資産税の課税標準額は、毎年4月に市町村から届く「固定資産税・都市計画税 納税通知書」でご確認いただけます。

①社宅が小規模な住宅の場合
次の(1)から(3)までの合計額が賃貸料相当額になります。
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2パーセント
(2) 12円 ×(その建物の総床面積( ㎡ )/ 3.3㎡ )
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22パーセント

では、設例の数字を使って小規模な住宅の場合の賃貸料相当額を算出します。(床面積は、132㎡とします。)
(1)20,000,000円 × 0.2パーセント = 40,000円
(2) 12円 ×( 132㎡ / 3.3㎡ ) = 480円
(3)8,500,000円 × 0.22パーセント = 18,700円

賃貸料相当額は、40,000円+480円+18,700円=59,180円 となります。

②社宅が小規模でない住宅の場合
次の(1)と(2)の合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 12パーセント
(2)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 6パーセント

では、設例の数字を使って小規模な住宅の場合の賃貸料相当額を算出します。(床面積は、134㎡とします。)
(1)20,000,000円 × 12パーセント = 2,400,000円
(2)8,500,000円 × 6パーセント = 510,000円
賃貸料相当額は、(2,400,000円+510,000円)× 1/12=242,500円 となります。

役員、社宅規模の違いによる家賃の差にビックリする

ここまで、事例を絞って社宅についてお伝えしてきました。
上記で設例を使い実際に賃貸料相当額を計算しましたが、社宅規模の違いによる1か月当たりの賃貸料相当額の差にお気づきでしょうか。
今回の設例は、あえて少し極端な設定をしておりまして、各固定資産税の課税標準額を始め、建物の構造・耐用年数を全く同じ条件としています。
唯一違うのは、床面積だけ・・・という設定です。
法定耐用年数が30年以下の建物であるという前提で、床面積が132㎡を超えるか否かの違いにより、役員が1か月当たり負担すべき賃貸料相当額が、
①社宅が小規模な住宅の 59,180円と、②社宅が小規模でない住宅の 242,500円とで、183,320円もの差が生じてしまうのです。

繰り返しますが、今回の設例は少し極端です。
ただ、せっかく有効活用できそうな役員社宅制度であっても、少しの違いによってその恩恵を得られなくなる可能性があることをお伝えしたいのです。
会社で社宅を考慮する役員の方々も、賃貸料相当額を支払うことは承知しているでしょうし、だいたいこれくらい払えばいいんじゃないといった相場的な
金額を想定される方もいらっしゃるでしょう。
しかし、実際には賃貸料相当額を決めるための計算式があり、規模があり、床面積があるというところまでは気付かれないのではないでしょうか。
それに気付かずに、木造住宅(耐用年数22年)を床面積134㎡で建ててしまった後では、取り返しのつかないことになりかねません。
「ああっ、床面積があと2㎡少なかったらぁーーー!」と後悔してもしきれないことになります。

今回のブログでお伝えしたかったのは、役員社宅の有効性はもちろんですが、それ以上に知らなかったことによる損失を被らないように
事前に専門家にご相談をして頂きたいということです。
相談という形でなくても、夢や希望、予定や雑談という形でのお話しでも構いません。
ちょっとした話の展開によって、あなたの将来のお役に立てるかもしれません。

~ちょっとした話からベビーな話まで、ご相談は三重県鈴鹿市の税理士法人フラッツ・コンサルティングまでご連絡下さい~

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