節税対策として経営者向けの生命保険を利用する方法は、以前から一般的に行われていましたが、2019年に見直しが行われ、解約時に払込保険料の大部分が返ってくるような保険については、支払われた保険料を損金で経理処理できる金額が大幅に削減されました。
それ以後、法人の節税目的として生命保険を利用するメリットは、ほとんどなくなったと言えます。
今回はさらに、所得税の節税目的として利用が可能な、いわゆる「名義変更プラン」というタイプの保険について見直しが検討されることになりました。
低解約返戻金型生命保険を利用した「名義変更プラン」
最近よく販売されていた、経営者向けの生命保険に低解約返戻金型生命保険というものがあります。契約後一定の期間は解約時の返戻金を極端に少なくし、その後引き上げるといった保険です。
節税目的として利用するスキームは、この保険をまず法人を契約者とし、被保険者を役員や従業員として契約します。次に解約返戻金が低額なうちに役員や従業員に名義変更をします。そして解約返戻金が引き上げられた際に解約し、返戻金を受け取るといった流れになります。
現在の税務上の取り扱いでは、名義変更をしたときには雇用関係に基づく経済的利益の供与として、その低額な解約返戻金の額が「給与所得」となり課税対象となります。(所得税基本通達36―37)
また、名義変更ののち解約返戻金を受け取った際には、「一時所得」として課税されるためいわゆる2/1課税が適用され、賞与などとして受け取るよりも個人への課税を大幅に節税できることになります。
今回、見直しが検討されているのは、名義変更時の「給与所得」としての保険の評価額です。
税務上の問題点
もともと生命保険の保険料は、その計算上年齢が上がるにつれてそのリスクに対応し、金額が上がっていくものです。しかし一般的には、保険期間中の保険料を平準化し、年齢が上がっても保険料が変わらないようになっています。
つまり保険期間の最初の方は、保険料の内のほとんどが将来のリスクに対応する部分であり、責任準備金として積み立てられていきます。
そして税法上、この責任準備金と解約時の返戻金はほぼ同じであるという前提で、名義変更時の評価額を解約返戻金の額と定めているのですが、この名義変更プランの保険の場合は、名義変更時の解約返戻金の額と責任準備金が大きく乖離しているということで、今回見直しが図られることとなりました。
変更後の取り扱い
具体的には、名義変更時に解約返戻金の額が、法人の保険積立金として資産計上している金額の7割未満の場合は、帳簿上の資産計上額で評価することを定めた改正が見込まれています。
しかも2019年7月8日以降に契約した保険が対象となるため、既契約も対象として遡って適用されるようです。
節税目的として契約していた法人にとっては、予定外の対応を強いられることとなるかもしれません。
後藤 百合子
~保険や税務のご相談は、税理士法人フラッツ・コンサルティングまで~