年明けからこれまで、いつもの冬らしい寒さを感じられる日はほとんどありませんでしたが、暦としては今日は大寒です。今年は、このまま穏やかに春を迎えることになるのでしょうか。
当事務所はというと年末調整シーズンもほとんど終わり、これからいよいよ確定申告の準備に入っていきます。本格的な繁忙期の幕開けです。
”利益”が必ずしも”資金増加”とはならない
お客様を訪問して試算表の報告をさせていただいくと、『利益は出ているけれど、資金繰りはそれほど楽じゃないから実感がない。どうしてだろう』というご質問をいただくことがあります。
損益計算書では黒字になっているけれど、実際の資金残高はとても充分とはいえない。そんな状況のまま進んでいくと最悪の場合、黒字倒産を招くことにもなります。
利益が出ているからといって、必ずしも資金が増えているとは限らないのです。
では、どうしてそのような状況になるのでしょうか?
資産・設備等の購入
事業運営の上では、設備投資が必要となることがあります。たとえば設備の購入時に代金をキャッシュで支払った場合、支払った金額全てを費用とすることができるわけではありません。
一定額以上の設備を購入した場合、特別償却等の例外はありますが、基本的に減価償却により期間按分して費用計上していきます。そのため、購入したときに費用はあまり計上されない一方で、資金は大きく減少するといったことになります。また、土地などのように、まったく費用計上されない資産を購入するときはさらに注意が必要です。
事業拡大のために設備投資や資産を購入したために資金不足に陥らないよう、資金繰りをしっかり計画することが重要です。
借入金の返済
金融機関からの借入では、利息は損益計算書に費用として計上されますが、元金返済額は損益計算書に表記されません。借入時には資金が大きく増えますが、返済とともに減少していきます。ところが、このことは利益の増減には反映されません。結果として、損益計算書上の利益と資金繰り状況は合わないことになります。
借入金によって資金調達をする理由は、前述の設備投資や事業の運転資金などいろいろありますが、たとえば設備投資の場合、減価償却費として費用計上する金額と返済金額は一致しないことが多く、利益と資金残高の差につながります。
売掛金回収のタイミング
企業間取引では多くの場合、掛取引や手形取引、電子債権取引が行われています。これらの取引の場合、損益計算書上では売上が計上されても、回収されて資金となるのは一定期間後になります。
また大きく売上が増えたときに、その売掛金の回収のタイミングより、その売上のためにかかった費用や仕入の支払いのタイミングの方が早い場合には、資金ショートが起こりやすくなるので注意が必要です。
在庫の増加
モノを扱う事業であれば、仕入れたモノを売り、その売掛金を回収し、回収した資金を次の仕入に充てて、また売上をつくる‥‥ということを繰り返して収益をあげていくことになります。ところが、仕入れたモノが売れずに在庫となっている場合があります。このときは、その在庫分の資金は回収されません。
このように売上に見合わない仕入をしていくと在庫が増えていきますが、在庫が増えても会計上は利益が減ることにはならず、そこで利益と資金残高のズレが発生します。
会社が売上拡大の状況にあるときは在庫も増えていきますが、長期間売れずに残ってしまう在庫が増えるようなことになると、最悪の場合は資金不足にもなりかねません。
モノがなければ売上はつくれませんが、在庫状況に気を配ることは資金繰りの点からも大変重要なこととなります。
以上のような要因から、”利益”が必ずしも”資金増加”にならない場合があるのです。健全な会社経営のためには、利益だけではなく資金状況(キャッシュフロー)も意識するようにしておくべきでしょう。
後藤百合子
~資金繰りや税金のご相談なら三重県鈴鹿市の南部博税理士事務所まで~