ゼロゼロ融資の返済が開始し資金繰り悪化の懸念
新型コロナウイルス感染症拡大の中、政府系金融機関と民間金融機関による融資、コロナ関連融資制度が実施され、2020年3月に政府系金融機関などが開始した無利子・無担保融資である「ゼロゼロ融資」は今年9月に終了し、約2年間でおおよそ42兆円の貸出を行っています。
この融資制度は貸付利息を国から財政支援を受けた都道府県などが3年分の利息を負担し、各地の信用保証協会が借主の信用リスクを支援することで比較的借りやすい融資となっており、貸付元金の返済についても最大5年間の据置が可能な融資制度ですが、この融資の返済開始が徐々に始まっており今なお続く経済不安定の中資金繰りの悪化を加速させています。
東京商工リサーチの「全国企業倒産状況」を見ると、2022年上半期の「新型コロナウイルス」関連倒産は1,121件(同36.3%増)で、同年9月は過去最多の210件発生し次第に増勢のピッチが上がってきています。
今後は事前の返済計画などが経営の肝になる
新型コロナウイルス感染症の影響が癒えていない中、昨今ではウクライナ情勢の悪化などに起因した物価高騰や歴史的な円安が経済活動に追い打ちをかけており、このような不安定な状況で返済を考慮した経営を持続していくためには経営計画や資金繰り計画をしっかりと固めていく必要があります。
計画と聞くとハードルの高さを感じられる経営者様も多いかと思われますが、シンプルに言えば毎月の売上高から材料やその他経費を引いて赤字にならないよう段階的に売上高や経費を調整してく事前準備ととらえてもよいかもしれません。
借入金の返済は毎月支払を行っていくなかで感覚的に「経費」と同じようにとらえられている方が多いですが、これは誤っています。返済に係る利息については経費としてとらえられますが、借入元金については経費ではなく、財務諸表の損益計算書を見ても返済元本は記載されていないため、「毎月の利益は赤字ではないのに現金・預金が減っている」といった状態に陥ることがあります。このため、経営においては当期利益だけでなくキャッシュフロー(現金の流れ)についても意識しなければなりません。
借入金は経営を行う上で季節性の資金需要や余裕資金の準備、設備投資資金など種別があり、返済原資を見ていくうえで運転資金を除いた現金、預金で返済できる場合や、売掛金、棚卸資産の金額の内で返せる金額であれば当面の資金繰りを細かく意識していく必要はないのかもしれません。しかしながら、コロナ禍で経営状況が悪化し資金の流失が増加している場合は注意が必要です。
決算書などの財務諸表から会社の現状の返済能力としてみるキャッシュフローの指標として簡易キャッシュフローがあります。
「簡易キャッシュフロー」=税引後利益+減価償却費
これは営業活動を行う中で税金を差し引いた最終的な利益(純利益)と経費に含まれるが、現預金を減らしていない費用(減価償却費)を足し合わせたものであり、営業活動においての本質的な借入金返済原資となります。
現在借りている借入金を返すためにはこの純利益がプラス、つまり黒字化させ、かつ返済の原資が年間の返済金額を超えていなければなりません。
返済計画は
①年間の返済金額を確認する。
②年間の売上原価や販管費など経費を確認する。
③返済原資となる利益を生み出すための売上高を確認する。
④目標売上高を毎月の営業活動に落とし込む。
といったステップが必要となります。
目標売上高について前期の決算書や毎月の試算表から目標売上高を逆算する式として「収支分析売上高」があります。
「収支分析売上高」=必要利益+固定費÷限界利益率
例)XX商事㈱の収支分析売上高
<当期財務状況>
年間売上高=3,000万円
変動費(50%)=1,500万円
減価償却費=100万円
固定費=1,400万円
税引前利益=100万円
法人税等(30%)=30万円
税引後利益=70万円
年間有利子負債返済額=300万円
必要利益={300万円(年間返済額)- 100万円(減価償却費)}÷法人税等(30%)相当分
=200万円÷70%
=286万円
限界利益率=(年間売上高-変動費)÷年間売上高×100
=50%
収支分析売上高=(286万円+1,400万円)÷50%
=3,372万円
この収支売上高を目標として年次経営計画を作成し、月間の行動計画に落とし込むということが必要になってきます。
目標売上高が売上確保の実態と大きく乖離している場合には経費削減や金融機関への返済の条件変更の依頼(リスケ)などが必要な場合もあります。返済計画や事業の立て直しについては各種専門機関などを活用する方法があります。
2022年9月には経済産業省より「中小企業活性化パッケージNEXT」を策定・公表し、収益力改善支援のための措置を強化しており、「中小企業事業再生等に関するガイドライン」の策定・活用では認定経営革新等支援機関による計画策定を条件に専門家費用を一部補助する仕組みやなどもあります。
経営者様の多くが社内に相談できる方が少ないため一人で経営課題について抱え込んでいる方もいらっしゃると思われます。
経営課題や計画策定についてお悩みがあれば、一度弊社へご相談ください。
【参考URL】
東京商工リサーチ 全国倒産状況
経済産業省 中小企業活性化パッケージ
全国銀行協会 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」
三谷
~経営計画・事業再生のご相談なら三重県鈴鹿市の税理士法人フラッツ・コンサルティングまで~