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役員報酬は青天井?

最近、線状降水帯による集中豪雨や危険なほどの暑さなど、生活環境に大きなインパクトがあるニュースを聞くと一頻りそわそわとしている三谷です。

経済的な話題では賃上げのニュースなどが度々取り沙汰されていますが、会社役員の方も同様に支払われる報酬は会社経営上問題ない範囲で上げていきたい方も少なくないように思われます。この役員報酬について、以下の気になるニュースがありましたので紹介させていただきます。

役員報酬額について国税当局と裁判

京都市にある「京醍醐味噌」は、2013年~2016年の4年間、代表と実弟に支払われた役員報酬21億5,100万円のうち、約18億3,956万円分を「不相当に高額」と国税当局に指摘され、約3億8,500万円の課税処分を受けたため、取り消しを求めて東京地裁に訴えを起こされていましたが今年3月に棄却されました。

双方の主張について詳細は省略しますが、裁判の争点となったのは以下の2点です。

① 京醍醐味噌は「ファブレス企業(工場を持たない企業)」か「卸売業者」かという点
② 法人税法34条2項において役員給与(退職金含む)のうち「不相当に高額な部分の金額」は損金(法人税を計算するうえでの経費)に認めないとする点

会社法では役員報酬は会社の定款または株主総会決議で定めるとされているため、株主の承認があれば報酬額は自由に設定できるようにとらえられています。

この考えは正しく、代表取締役=株主のようなオーナー経営の会社ではご自身の役員報酬は株主総会決議で自由に設定でき、頑張った分に見合う報酬を受け取ることができます。

ここで重要なのは法人税を計算するうえでは、自由に設定した役員報酬≒損金(経費)ではないということです。

 

役員報酬の基準とは

役員報酬の支給に対して過大(多すぎる)場合の判断基準は以下の2つがあげられます。

「実質基準」
役員ごとに「実際に職務に見合った金額であるか」や「会社業績と比べて高すぎではないか(※倍半基準)」などといったように、実質・実態に照らして判断します。
※「倍半基準」
類似する他社を選ぶ際、売上高・利益額・利益率・総資産額などの事業規模を表す指標を用いて指標の0.5倍以上、2倍以下の他社と比較するという基準になります。

「形式基準」
定款の定めもしくは株主総会の決議内容に基づいて、役員報酬額を判断することをいいます。

これら基準を用いて支払われた報酬が不相当に高額とみなされなかった場合、定められた支払方法によって払われた報酬(定期同額給与や事前確定届出給与)は損金(経費)となります。

冒頭での「京醍醐味噌」の裁判の判決では「卸売業に該当」と認定され、実弟に支払われた報酬については「弟の事業について収益は生じていない」ことを重視し、海外での新規事業再開のめどが立っていない状況において支払われた報酬は企業の意思決定としておよそ合理的なものと言い難い」として判決が下りる結果となりました。

このような報酬や給与についての「適正額」をめぐる論争は明確な基準が設けられておらず、法律の解釈や概念によって多様に受け取れるため判断がとても難しく批判的な意見も一部散見されます。
現行制度について様々な社会・経済活動や働き方などの変化に適応して法律の改定などが進むかもしれません。

今後は役員報酬などは安易に支払金額を設定せず、高額すぎないかという視点を加えていただければと思います。もし判断に迷われた場合は、ぜひ一度ご相談ください。

 

 

~役員報酬や賃金の相談については、三重県鈴鹿市の税理士法人フラッツ・コンサルティングまで~

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